本書のタイトルとなっている「メタ思考」とは、自身の行動や考え、性格、特徴を俯瞰の視点でとらえて、認識しながら活動することを指します。
本書ではそんな「メタ思考」と呼ばれる思考法を身につけることで、人生をより自由に、もっと柔軟にカスタマイズしていく方法を知ることができます。
今回はそんな「メタ思考」について、元日本マイクロソフトの執行役員でもあり、プレゼンの神としても知られている澤円氏の表現もお借りしながら、そのほんの一部を紹介させていただきます。
メタ思考の本質
多くの企業で働くビジネスパーソンは、職場での自分の立場や評価に囚われ、悩みを抱えることが少なくありません。
「頑張ったところで見返りはないのでは?」 「会社が自分の価値を正当に評価してくれていない気がする」
こうした悩みの根底には、「他人との比較」によるストレスが存在します。
しかし、会社という閉じた環境の中だけで物事を考えるのは、時に視野を狭める結果につながります。自身のキャリアや人生をより良い方向に進めるためには、発想の枠を超え、「視点を切り替える」ことが重要です。
具体的には、狭い「内側」の視点から、もっと広い「外側」の視点に目を向けるべきです。広い視点を持つことで、自分の立ち位置を社会全体の中で捉え直すことができ、より客観的な自己理解が可能になります。その結果、これまで過剰に気にしていた些細な問題が、実は取るに足らないものであることに気付けるでしょう。
このように、物事を「外から眺める」というアプローチが、「メタ思考」の本質だと言えます。
自分を使い分ける
会社に所属するという状況は、知らず知らずのうちに「自分自身をすべて会社に預けてしまう」という危険性を含んでいます。そうした状況に陥らないための効果的な思考法が「エイリアス」という概念です。
「エイリアス」という言葉には、「別名」や「リンク機能」といった意味があります。この概念では、職場や特定の環境にいる自分を、自分の名前を冠した「分身」としてとらえることを提案しています。つまり、会社での役割やポジションはあくまで一部の自分に過ぎず、それが本当の自分全体を表しているわけではない、という考え方です。
この視点を持つことで、会社の中での立場に過剰に依存せず、自分自身をより広い視野で捉え直すきっかけとなるでしょう。エイリアス思考は、自分を客観視しながら柔軟性を保つための強力なツールとして機能します。
たとえば、職場での自分をどう捉えるかを変えることで、心の負担を軽くし、より自由な生き方が見つかるかもしれません。一つの考え方として、「会社にいる自分」を「エイリアス」と見なしてみてはどうでしょう。「エイリアス」とは、自分の一部の機能を切り出した分身のような存在です。それは自分自身とリンクしていますが、完全に同一ではありません。
この考え方を採用すると、たとえ職場で不当な評価や扱いを受けたとしても、それが自分自身の価値を否定するものではないと捉えられるようになります。エイリアスという仮の姿を通じて職場での役割をこなしつつ、本当の自分を守ることができるのです。そして、そのリンクはいつでも切り離すことが可能です。これは、自分のアイデンティティが一つの会社に囚われることなく、広い視野で自分自身を生きる助けになります。
このように、エイリアスという考え方を取り入れれば、過度に自分を傷つけることなく、より柔軟で自由な視点を持つことができるのです。
正解にとらわれない思考
私たちが法治国家に住む以上、法律を守ることは必要不可欠です。しかし、それ以外のルールや慣習については、絶対的な強制力があるわけではありません。
社会には、多くの人が快適に過ごせるようさまざまなルールが存在しますが、それが常に正しい解決策になるとは限らないのです。たとえば、「妊娠中の女性や高齢者には席を譲りましょう」という考え方がありますが、時には体調の悪そうな若い人に席を譲るべき場面もあるでしょう。
それでも、多くの人が「ルールはいつでも守るべきもの」と捉え、迷いを感じることがあります。なぜ私たちはこうした思い込みに囚われてしまうのでしょうか。その背景には、ルールを守ることで褒められた過去の成功体験があると考えられます。学校や家庭で、規則を守ることで大人から評価された経験が、「このルールは正しいかどうか」を考える余地を奪い、思考を停止させてしまうのです。
世の中の「当り前」をすべて鵜呑みにするのではなく、価値観や判断基準といった「ものさし」を自分の中で複数持ち、多様な視点を持つことで物事の本質的を理解するスキルが今後求められてくると本書では言及されております。
自分ができることにだけに集中する
私たちが生きる中で、自分の力でコントロールできないことは大多数を占めています。たとえば、会社で理不尽な命令を受けた場合、それに従わざるを得ないこともあるでしょう。それでも、自分が影響を与えられる部分に目を向け、「どこにコントロールの余地があるのか」を考える姿勢が重要です。たとえ直接的に変えられないことでも、直面している問題点を要素分解して、「この中で自分に変えられることはないか」と思考をめぐらして実践することが大切です。
この「自分がコントロールできることに集中する」というアプローチは、人間関係でも大いに役立ちます。人間関係のトラブルは、「自分と相手は違う存在である」と認識することから解消へ向かうことが多いのです。他者が自分の思いどおりに動くことを期待するのは非現実的ですし、期待に反して失望するのは宝くじに外れるようなものです。それを理解すれば、相手に過剰な期待を抱かなくなり、感情的な負担も軽減されます。
まとめ
本書では冒頭に紹介した「メタ思考」を活用して、人生をより豊かにする方法を紹介されております。
中でも私は「エイリアス」という考え方に感銘を受けました。皆さんの中にも、例えば会社や所属する組織で失敗してしまったときに「もう取り返しがつかない・・・」なんて大事にとらえてしまう方も多いと思います。
そんなときにこの「エイリアス」という概念を知っていれば「自分の中のほんの一部の機能を提供しているだけだから」と余裕が生まれますよね。
そして、余裕が生まれれば悩みの種である物事に対しても客観的にとらえなおすことができて、問題の本質に気づけたり適切な行動をとることができると思います。
そんな具合で自分の力・思考で様々な問題を解決できると、ビジネスだけでなく生活が上手く回りだして、なにより豊かな精神状態で生きていくことが可能になると思います。
大事なのは、「多様な視点をもつこと」だけです。
ぜひ読者の皆さんも本書を読んで「メタ思考」を獲得し、人生をより豊かにしていきましょう!
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